2015 Highlights of ASH in Asia in Bangkok 派遣レポート 迫田 哲平(九州大学病院血液腫瘍内科)

奈良 美保

この度、2015年2月28日、3月1日にタイ・バンコクで開催されたHighlights of ASH in Asiaに派遣医師として参加させて頂きました。まずは、このような貴重な機会を頂いたことに御礼申し上げますとともに、ここに学会報告をさせて頂きます。

私は病棟医として大学病院に勤務しておりますが、個々の症例について日々の診療に携わっている中で、血液疾患を網羅的に勉強したいと常々思っておりました。今回、ASHで発表された最新の知見について概説して頂ける本学会への参加の話を頂き、視点を変えて患者さんに恩返しできるヒントが得られればと考え、応募させて頂きました。

開催都市であるバンコクは私にとってはじめて滞在するアジアの都市となりました。出発前日まで全く準備をしていなかったため、バンコクの気温が2月~3月には時に30℃を超えることがあると知ったのは出発前夜でした。慌てて夏服を引っ張り出して準備を行い、福岡空港から羽田経由でバンコクへ。空港では学会事務局の方が迎えに来てくださり、ホテルまで車で送って頂きました。学会の期間中、事務局の方には親切に対応をして頂き大変お世話になりました。ホテル到着後に街を散策しましたが、バンコクは道路に常に屋台が数多く並び、さながら毎日が夏祭りであるような活気に溢れた街でした。

翌朝から宿泊先のホテルの向かいにある会場で学会が始まりました。疾患ごとにセッションが区切られる形でASHのexpertの先生方が講演され、アジアにおけるその疾患の概況に触れた後、ASHでなされた最新の報告を交えながら症例をベースとして検討していくといった形式で進みました。また、講演後にはフロアの先生方あるいはmoderatorの先生方からの質問にexpertの先生方が答えるという形で活発なdiscussionが行われました。特にサラセミアをはじめとする赤血球異常のセッションでは最も活発なdiscussionが行われ、アジアの学会らしい特色が出ているように感じました。私にとっては日本での稀少疾患や小児領域の疾患について学ぶ機会は、日々の診療及び自分で講演内容を選ぶ形式の学会ではなかなか得られないため、興味深く話を聞かせて頂きました。その他、KIT 変異を有するCBF白血病に対するdasatinibの有効性(Abstract #8)や小児のB細胞性ALLに対するBispecific T cell engager antibodyの良好な治療効果(#3703)等、既存の薬剤を用いた新たな治療法や新規薬剤の臨床試験での結果が報告される一方で、10年以上のfollow upによるITPに対する長期的な脾摘の影響(血栓塞栓イベントの増加、心血管イベントの増加)が報告される(#232)など、各セッションにおいて多様な興味深い報告が紹介されていました。

昼食の時間にはexpertの先生方と食事をする機会が得られ、同じテーブルに座ったアジア各国の先生方ともお話しすることが出来ました。Expertの先生が、私を含め同席した先生方に各国の医療を取り巻く環境について質問され、各々の国で状況は異なっていることを再認識することになりました。第一にコストの問題を述べられる先生方が多く、日常診療には各国の経済状況や医療制度の違いが色濃く反映されていることが分かりました。一方で、promisingな薬剤が使用出来ないドラッグ・ラグについての認識も新たにすることとなり、アジア諸国及びアメリカ等欧米諸国と比較した際の日本の医療の現状を、断片的にではありますが感じ取ることが出来ました。

私は血液内科医としては新米であり、業績等も何ら持ち合わせておりません。今回、講演とdiscussion、各国の先生方とのお話の中で、私が現在行っている医療を客観的に見つめられたことは大変良い経験となりましたし、今後への刺激となりました。このような貴重な機会を与えて下さった日本血液学会国際委員会の先生方や事務局の方々、そして医局の先生方・病棟スタッフの皆様にこの場をお借りして、心より感謝を申し上げます。

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